穿通性胃潰瘍後の潰瘍瘢痕上に発生した早期胃癌に対して内視鏡切除した一例

私が総合病院勤務時代に、穿通性胃潰瘍(一度潰瘍により、胃の内側と外側がつながる穴が空くこと。)を起こし、主治医として入院管理した患者です。

その当時の、処置としては、ネオベール(組織再生を促す素材)とぺりプラスト(接着糊)を使用し、穿通した潰瘍に充填して、穴を塞ぐ治療をしました。(画像がなくて申し訳ありません。)

その後、年に1回、内視鏡Followをしていました。今年度の内視鏡で早期胃癌を発見、当院で治療の方針としました。

穿通するほどですので、胃は強く変形しており、わかりやすい写真がとれず・・・。

付図のごとく、胃の小彎側に、突如ひだが途絶するほどの潰瘍瘢痕を認めます。

その直上に

易出血性の陥凹性病変を認めます。

NBI観察では、高分化型腺癌(顔つきの良い癌)+中分化型腺癌(やや顔つきの悪い癌)の混在所見を認めます。

周辺マーキングを行い、剥離開始しました。

予想通り、筋層と病変が強固に癒着し、通電するスペースがごくわずかしかない状況。なお、使用した局注はもちろん、ヒアルロン酸です。

剥離に関しては、筋層を損傷しないように、繊維を1本ずつ剥がしていくように進めていきます。

そこで出番は、オリンパスのフックナイフ。写真のごとく、繊維引っ掛けて切っていくデバイスとなります。

筋層と線維化領域を見極めないと、穴が空き緊急手術となる場面ですが、豊富な経験と臨床的嗅覚を活かし、病変切除成功となっております。

潰瘍底をみれば、エキスパートの先生であれば、察すると思いますが、強烈な線維化(癒着)症例でした。

切除時間は、28分です。(一般病院では1時間以上かかると思います)