私が得意としている”色差”を利用した胃癌の発見方法は、新潟大学魚沼基幹病院消化器内科 八木一芳先生(前特任教授)の学会発表を拝聴してから習得したものです。
八木先生は胃の拡大内視鏡のスペシャリストであり、日本の第一人者であります。
大学院時代(10年以上前になりますが)は、岩手医大病理学講座で菅井前教授のもとで、胃癌の研究をさせていただいておりました。
内視鏡と病理の重要性を学んでいた時代に、八木先生が執筆した本に出会いました。何度も熟読し、病理学講座にある検体と内視鏡を照らし合わせる日々が続きました。兄弟子である永塚先生(岩手医大消化器内科講師)にも熱いご指導をいただき、胃癌の勉強に励んでおりました。

憧れていた八木先生は、当院の初代理事長 謙二先生の新潟大学消化器内科時代の後輩であることが発覚し、親近感をいだくようになりました。
私が仙台厚生病院で内視鏡の修行をしていた時代(当時全国ESD件数トップ)には、八木先生のお弟子さんである名和田先生との出会い(拡大内視鏡の読み方がピカイチ)もありました。
仙台で修行を終え、会津に戻り、竹田綜合病院でESD担当として、約700例の癌の内視鏡治療(ESD)を2年間担当し、病理との対比の日々が続きました。その間、執筆した論文がありますが、いつの日かご紹介します、
会津では、渋川クリニック理事長 渋川悟郎先生(会津医療センター前教授)と八木先生を中心に胃癌症例を討論する会に参加させていただくかたちとなり、何度も症例提示をさせていただき、八木先生から貴重なご指導・討論する機会をいただくこととなりました。
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八木先生の研究会では、以下のことを教えていただきました。
①早期胃癌のNBIは、約8割が茶色(周辺緑色)であること
②残り2割はNBIで緑色の早期胃癌であること(実際、発見頻度は2割もない印象ですが)
③その緑の由来はMuc2(杯細胞)に由来すること
以下の掲載論文を何度も熟読することとなりました。

そして、八木先生との検討会では、このMuc2陽性胃癌は悪性度が高いということも学ばさせていただきました。
胃癌に関しては勉強している方だと思っておりましたが、この論文でGoseki分類という胃癌の分類(日本と欧米では扱っている胃癌分類が異なるため、多くの胃癌分類を頭に入れておく必要があります)の存在にも出会い、知識を深めていく形となりました。


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前置きがだいぶ長くなりましたが、今回久々にNBIで緑色の早期胃癌を発見し治療しましたので、症例提示します。

前庭部大弯前壁に発赤調の0-IIc lesionを認めます。

TXIモードでは、病変の赤みがより際立ちをみせています。


癌部は全体に緑色に観察され、拡大観察上、LightBlueCrest(LBC)が見られ、杯細胞を含む胃癌が推測されました。
これは、Muc2陽性の早期胃癌の可能性あり、悪性度の高い癌の可能性を踏まえ、深めの粘膜下層剥離術(ESD)を施行しました。

さて、その病理は、しっかりESDで治癒切除が得られております。
免疫染色を追加で行った結果、予想通りMuc2陽性の顔つきの悪い癌でした。幸いなことに、断端陰性、脈管侵襲陰性のため、根治できた症例です。

HE染色では、High grade tub1(高分化型腺癌)

Muc2染色では、癌部の30%が陽性。すなわち、Muc2陽性胃癌の診断としております。
胃癌と診断された場合でも、その顔つきは、様々な観点・手法から、悪性度を評価する必要があります。
病理を知らない内視鏡医は、癌を1つのカテゴリーとしてみています。
病理を勉強している内視鏡医は多方面から癌を評価し、複数のカテゴリーに分けて臨床にフィードバックしております。
苦しくない内視鏡・早期胃癌の早期発見・治療・癌の病理に情熱を注いでおりますので、是非当院で内視鏡を受けてみてくださいね。