胃カメラを施行した後、担当の先生に慢性胃炎ですね!と言われる方が多いと思います。
その慢性胃炎は、基本的にピロリ菌感染に伴う胃の状態を意味します。
一方で、その慢性胃炎の中には、自己免疫(自分の免疫で自分を破壊する)による慢性胃炎、すなわち”自己免疫性胃炎”が隠れています。
当院で、昨年胃カメラを受けた方の中で7例の自己免疫性胃炎患者さんを見つけております。
疑って観察しないと、見逃す胃炎です。
この自己免疫性胃炎を早期に発見する意義、その後の管理の仕方についてレクチャーします。
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自己免疫性胃炎は、胃癌・神経内分泌腫瘍(悪性腫瘍)がでてきやすいことが知られています。
ピロリ菌感染の減少に伴い、胃癌の背景疾患として、この自己免疫性胃炎の重要性が相対的に高まっています。
診断は、内視鏡所見、生検所見、抗壁細胞抗体(自費5000円〜6000円だったと思います)で確定します。
<3つのパターンの紹介>
①自己免疫性胃炎の単発発症:診断は比較的容易
②自己免疫性胃炎とピロリ菌による慢性胃炎の合併例(泥沼除菌といいます):診断は難しいことが多いです。
③自己免疫性胃炎を背景に胃癌・神経内分泌腫瘍を発症した症例
【①自己免疫性胃炎の単発発症例】
まず、ピロリ菌感染に伴う慢性萎縮性胃炎は胃の下側→上側へ萎縮の範囲を広げていくことが原則とされています。
一方、自己免疫性胃炎では胃の上側→下側へ萎縮の範囲を広げていくことが原則となります。
※萎縮がある領域に癌が出ることが一般的となります。つまり、萎縮の領域が狭いうちに、病気を見つけ出すことが重要とされます。


炎症の範囲・萎縮の範囲に準じて、ステージが決まります。早期、活動期、終末期に細分類されます。
<早期症例>


NBIモードに切り替えると、この”残存胃底腺”がより明瞭化されます。

この残存胃粘膜が、段階的かつ多巣性に広がっていきます。多巣性に広がると、領域性を持った萎縮領域をなります。
また早期では、胃小区の浮腫性変化がみられます。
<活動期症例>


【②自己免疫性胃炎とピロリ菌による慢性胃炎の合併】

二次除菌まで失敗された方は、是非当院へご相談下さい。
【③自己免疫性胃炎を背景に胃癌・神経内分泌腫瘍を発症した症例】

検診バリウム検査の異常精査で当院受診されました。
背景に、自己免疫性胃炎がり、前庭部(胃の出口)に進行胃がんが見つかり、総合病院へ手術紹介となりました。
やはり、バリウム検査は、早期胃がんが見つかりにくい点や自己免疫性胃炎を見つけにくい点が挙げられますので、推奨しません。
もし、胃カメラで自己免疫性胃炎を事前に診断できていれば、定期胃カメラで早期発見・内視鏡治療で根治できたかもしれない症例です。

この症例も、検診バリウム検査の異常精査で当院受診されました。
背景に、早期の自己免疫性胃炎がみつかっております。体上部(胃の上側)に神経内分泌腫瘍が見つかり、総合病院へ手術紹介となりました。
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自己免疫性胃炎の多くは、甲状腺疾患を合併しているとされています。“thyrogastric syndrome”とも言われています。
自己免疫性胃炎の診断がついた場合は、鉄、ミネラル、ビタミンB12、甲状腺疾患の有無などを検査していただきます。
その結果に準じて、補充療法を行います。
また、前述のごとく、胃癌と神経内分泌腫瘍(悪性腫瘍)のリスクを説明し、定期的に胃カメラを受けていただくことになります。
些細な症状から重大な病気が見つかることが多いので、診察の際は遠慮なくご相談下さい。