胃に発生するMALTリンパ腫(悪性リンパ腫)は一般に、ヘリコバクター・ピロリ感染に由来して発生する腫瘍と言われています。
そのため、ピロリ菌を除菌することで腫瘍が消失することが多いとされています。
また、ルガーノ国際分類(悪性リンパ腫)に準じて、Stageも決定し、放射線療法や抗がん剤治療をすることが一般的です。
ピロリ菌の除菌が進む一方、衛生環境の改善もあり、日本でピロリ菌に感染している患者は少なくなっています。
当院は、ヘリコバクター学会認定医(ヘリコバクターに関する最新情報を定期的に勉強しております)のライセンスを取得しています。
ピロリ菌が陰性と言われているのに、主治医から胃炎があると言われている方は、ぜひ当院へ受診をご検討下さい。
ヘリコバクター・スイスという菌に感染している可能性も考えられると思います。
今回提示する症例は、ヘリコバクター・スイスに由来した胃炎(非常に珍しい)から発生したMALTリンパ腫を紹介します。
<症例提示>
80歳代男性、定期内視鏡で受診されました(無症状)。
H.pylori感染診断:ピロリ抗体陰性,尿素呼気試験陰性。

上図の如く、しっかり空気を胃にいれて観察しないと、見逃しやすい病変です。

腫瘍血管を観察すると、癌の血管ではなく、枯れ枝血管が観察されます。悪性リンパ腫の血管であることは、専門医だとすぐ判断できると思います。

病変の深さは、1番上の層にとどまっていることが超音波内視鏡検査で確認されました。

病変は5mm程度と小さく粘膜表層にとどまっていることから、放射線療法・抗がん剤治療は希望されず
内視鏡的切除(ESD)をする方針となりました。


螺旋状の構造物を鏡検(病理組織)で観察しております。



本症例含め、内視鏡切除されたMALTリンパ腫は6例のみの報告と少ないです。
報告例の中で、本症例は4mmと極小病変で発見しております。
内視鏡治療後5年再発なく経過しています。
ルガーノ国際分類 I期でみつかった病変は、内視鏡治療が選択肢になりうると考えております。
しかし、症例数の蓄積が必須だと思います。
