のどの違和感で受診される方が多くいます。
耳鼻科の先生にみてもらっても、異常ないと言われた・・・・
かかりつけで胃薬を処方されたが、改善がみられない・・・・など
一般的に、咽頭部違和感の鑑別は、①逆流性食道炎に代表される炎症性疾患 ②食道癌などの腫瘍性疾患に大別されます。
しかし、極稀に今回ご紹介する、咽頭食道憩室(Zenker憩室)が存在します。
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<症例提示>
80歳代男性、他院内視鏡で異常なしと言われたが、明らかに固形物が詰まり苦しいため、当院に再検査目的に受診。

食道入口部をエアーをしっかり入れながら観察し挿入(解剖学的に狭い領域のため)すると、すぐ、左側に食残が確認できました。
本当のご飯の通り道は右下の空間になります。

少々時間がかかりましたが、憩室内に貯まる食残を除去し水洗し終了しました。
この憩室は、仮性憩室(解剖学的に脆弱な部位に発生しており、筋肉の層がない小部屋)のため、炎症や出血、穿孔(あな)をおこすことがあります。
根治術は外科的治療ですが、年齢を考慮して、食事指導のみの方針としました。詰まる際は再度内視鏡で食残除去することで合意しています。
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さて、喉から食道に移行してすぐの部位かつ虚脱部位のため、この憩室は見逃されやすいです。
さらに、間違って憩室と認識せずににカメラを進ませれば、穿孔の可能性もあります。
食道穿孔は命にかかわる病態です。
やはり、内視鏡は内視鏡専門医のライセンスをもっている先生にしてもらうようにしましょう。
また、この食道憩室を罹患されている方は、内視鏡検査を受ける際に必ず内視鏡施行医師に相談するようにして下さい。
たとえば、胆管ステントや膵管ステント、胆石除去などに用いる内視鏡は、側視鏡とよばれるカメラで挿入します。
すなわち、側視鏡(前方が見えないカメラ)で憩室挿入した場合、食道穿孔します。
勤務医時代に習得したテクニックとして、通常カメラ(前方が見えるカメラ)を挿入し、カメラごしに、ガイドワイヤーを胃内に挿入・留置します。通常カメラを抜いたあと、側視鏡にガイドワイヤーを通し、レントゲン下に側視鏡を挿入すれば、憩室挿入を回避できます。