咽頭食道憩室の一例

のどの違和感で受診される方が多くいます。

耳鼻科の先生にみてもらっても、異常ないと言われた・・・・

かかりつけで胃薬を処方されたが、改善がみられない・・・・など

一般的に、咽頭部違和感の鑑別は、①逆流性食道炎に代表される炎症性疾患 ②食道癌などの腫瘍性疾患に大別されます。

しかし、極稀に今回ご紹介する、咽頭食道憩室(Zenker憩室)が存在します。

********************

<症例提示>

80歳代男性、他院内視鏡で異常なしと言われたが、明らかに固形物が詰まり苦しいため、当院に再検査目的に受診。

食道入口部をエアーをしっかり入れながら観察し挿入(解剖学的に狭い領域のため)すると、すぐ、左側に食残が確認できました。

本当のご飯の通り道は右下の空間になります。

少々時間がかかりましたが、憩室内に貯まる食残を除去し水洗し終了しました。

この憩室は、仮性憩室(解剖学的に脆弱な部位に発生しており、筋肉の層がない小部屋)のため、炎症や出血、穿孔(あな)をおこすことがあります。

根治術は外科的治療ですが、年齢を考慮して、食事指導のみの方針としました。詰まる際は再度内視鏡で食残除去することで合意しています。

*********************

さて、喉から食道に移行してすぐの部位かつ虚脱部位のため、この憩室は見逃されやすいです。

さらに、間違って憩室と認識せずににカメラを進ませれば、穿孔の可能性もあります。

食道穿孔は命にかかわる病態です。

たとえば、胆管ステントや膵管ステント、胆石除去などに用いる内視鏡は、側視鏡とよばれるカメラで挿入します。

すなわち、側視鏡(前方が見えないカメラ)で憩室挿入した場合、食道穿孔します。

勤務医時代に習得したテクニックとして、通常カメラ(前方が見えるカメラ)を挿入し、カメラごしに、ガイドワイヤーを胃内に挿入・留置します。通常カメラを抜いたあと、側視鏡にガイドワイヤーを通し、レントゲン下に側視鏡を挿入すれば、憩室挿入を回避できます。