下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの症状がでた際、一番考える病気といえば、”感染性胃腸炎”です。
この時期、多い病気の一つです。
感染性胃腸炎の原因は、①細菌性 ②ウイルス性に大別されます。
①の細菌性に関しては必要時抗生剤の投与(全例ではない)、②のウイルス性は文字通り抗生剤の投与は不必要であります。
問診で、疼痛部位や季節、食べたものから、原因となる細菌又はウイルスを推測します。
感染性胃腸炎に対して大腸カメラ検査をすることは一般的ではありません。
(急性期に大腸カメラの下剤は良くないため)
症状が長い時や、胃腸炎として非典型的な時(下痢がなく、疼痛だけが続くetc)は、大腸カメラ検査を行います。
今回は上記の条件を満たしたため、内視鏡検査を施行し、診断に至った一例です。
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<症例提示>
20歳大女性、2週間以上続く微熱と右下腹部痛で受診。
生ものを食べた記憶はなく、自分でもおもいあたる食べ物はなかったそうです。抗生剤内服歴もなし。
胃腸炎や急性虫垂炎としても経過が長い点を考慮し除外。
鑑別としては、上行結腸憩室炎や感染性胃腸炎に伴う回腸末端炎、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患が挙げられました。
そのため、大腸カメラ検査を行う方針としました。

回盲部(小腸と大腸のつなぎ目)のバウヒン弁の、炎症性腫大+びらん(粘膜の炎症)を認めました。

回腸(小腸)にカメラを進めると、全周性の浮腫性肥厚と潰瘍性病変を認めました。

上行結腸の一部には、タコいぼ様びらんが散見されました。
これらの所見から、カンピロバクター感染かエルシニア感染に鑑別(時に腸結核などもありますが)が絞られました。
生検(細胞の検査)と便培養を提出。
腹痛症状も強いことから、膿瘍への移行を考慮し、上記2疾患をカバーする抗生剤の投与がBetterと判断しました。
最終診断は、培養結果で、エルシニアが検出されたため、エルシニア腸炎として治療継続、完治に至りました。
専門医試験ではよく出ますが、一般的に聞き慣れない胃腸炎かと思われます。
この病気の特徴は
①右下腹部に限局
②人畜共通感染
③潜伏期が長い(3〜7日) 例えばサルモネラ菌であれば12〜24時間。
④加熱不十分な豚肉の摂取が原因
恐ろしいことに、冷蔵庫内の0〜5℃でも増殖可能であることです。
予防としては、
冷蔵庫を過信しないようにしてください。また、肉はしっかり火を通してから食べるようにしましょう。