吐血、黒色便を主訴に来院するケースも当院では多く、状況に応じて適切な止血処置を行っております。
今回は、特定の薬剤の影響で発症する食道炎を紹介します。
<症例>
70歳台男性、他院で心房細動に対してダビガトラン / プラザキサ®︎(抗凝固薬)内服中。
他院で胃薬を処方されていたが、改善が見られず、当院で胃カメラ目的に受診されました。
主訴:嚥下時胸部違和感


肌色にみえ、薄く枝状の血管が観察される領域が正常粘膜になります。
一方11時〜7時方向にかけて白濁し、剥離した粘膜が観察されます。
以前はワーファリンと呼ばれる抗凝固薬が主流でしたが、現在は新規の抗凝固薬の登場により、このダビガトラン起因性食道炎を発見する機会が増えているように感じます。
ダビガトランを服用している患者の約20%の頻度で発症しているとされています(意外と多い)。
血液サラサラ系のお薬すべてがこのような剥離性食道炎を起こすわけではありません。
ダビガトランの添加物である”酒石酸”が原因とされています。
酒石酸は酸性度の高い物質で、胃まで到達せずに食道壁に付着することで食道炎を引き起こすとされています。
このダビガトラン起因性食道炎の治療法は、以下の方法があります。
①抗凝固薬の変更
②変更できない理由があれば、水分おおめにとりながら内服し、その後2時間程度横にならないように指導する。
今回の症例は、他院でダビガトランを処方されていたため、紹介状を記載し、別の抗凝固薬に変更していただきました。3ヶ月後の胃カメラ検査では正常な食道粘膜に戻っていることを確認し終了しております。
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※参考までに、新規の抗凝固薬(直接経口抗凝固薬:DOAC)一覧
【薬品名 / 特徴】
①ダビガトラン(プラザキサ®︎):拮抗薬(中和剤)が存在する。腎障害症例は注意。
②リバーロキサバン(イグザレルト®︎):1日1回の内服ですむ。
③アピキサバン(エリキュース®︎):腎機能低下症例に使いやすい。
④エドキサバン(リクシアナ®︎):Made in Japan