開業医(町医者)の役割の1つは、病気を早期に拾い上げ、総合病院(治療を専門にする勤務医)へ繋げること。
そのため、初診患者 あるいは 通院患者の新たな訴えへの診察は、慎重に行う必要があります。
ファーストコンタクトで、町医者が病気を見つけるまでに時間がかかってしまうと、
患者さんが夜間救急外来に搬送となったり、最悪の場合、命に関わる病態へ発展しまいます。
総合病院とは異なり、CT検査で病気を拾い上げることが不可能な状況で、いかに病気を見つけ出すか。
当院では、限られた時間内で丁寧な問診(傾聴)と視診(見る)、聴診(聴診器をあてる)、打診(指で叩く)、触診(触る)を徹底して行います。
今回は、破裂すると命に関わる病気である、腹部大動脈瘤の症例提示です。
<症例提示>
80代の女性、腹痛の訴えで受診。
数ヶ月お腹のズキズキする痛みが続くため受診されました。
へそ周りの疼痛を訴えており、通常、臍周囲=小腸・大腸の炎症(所謂、胃腸炎)を第1鑑別疾患、膵臓病変が第2鑑別に挙がると思います。
問診上、嘔気や下痢はなく、痛みの部位に移動性はなく、鈍痛。
この時点で、胃腸炎としては非典型的と判断し、身体診察に移行。
視診:腹部平坦、軟
聴診:腸蠕動音正常
打診:鼓音なし(ガス溜まりなし)
触診:疼痛部位を浅く押すと、拍動性腫瘤を触知
この時点で腹部大動脈瘤が第1鑑別に変わりました。
腹部エコー検査を施行した結果、70x50mm大の腹部大動脈瘤と16x16mm大の肝門部動脈瘤が見つかりました。



一般に腹部大動脈瘤は人工血管置換術>ステントグラフト、肝門部の動脈瘤はコイル塞栓がゴールドスタンダードとされています。
腹痛をきたす疾患は消化管のみならず、多岐にわたり病気があります。
様々な角度から病気を見つけ出せるよう、文献的知識のアップデート・腹部エコースキルの向上に努めてまいります。