糞石は,大きいものでは通過障害による症状を引き起こし,腸閉塞,尿閉,閉塞性大腸炎,大腸にびらん・潰瘍や穿孔など命に関わる合併症につながります。
バリウムによる糞石や長期臥床による大腸運動能の機能的低下・慢性便秘を背景に便が濃縮・硬化して生じます。
そのため、今後高齢者の増加に伴い、この糞石性イレウス(いわゆる腸閉塞)は増加することが示唆される。
※コカ・コーラで溶解療法もありますが、第一選択は内視鏡的摘出になります。
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症例は90歳台 女性。1週間排便がなく受診されました。
他院で下剤を1日1回処方されていたようですが、改善なく(下剤調整してくれなかったようです)、当院受診されました。


腹部レントゲンを取ると、大腸全体に貯留するガスと、一部小腸ガスを認め、”イレウス(腸閉塞)”と診断しました。
S状結腸ないし下行結腸に赤丸で示す、閉塞機転を認めます。
その原因は・・・
①癒着(手術)
②大腸癌
③糞石
に大別されます。①は所見として合わず。
③糞石 > ②大腸癌 の可能性を考慮しました。
原因精査のため、無送気(水浸法による内視鏡挿入:水をいれて視野を保つ方法)で大腸カメラを挿入しました。
※空気を入れた挿入すると、病態の増悪を誘発するため。

糞石による閉塞性大腸炎をきたしており、粘膜からの出血と腸に嵌頓する糞石を認めました。

糞石を内視鏡処置具で破砕していくと、何層にも重なり合う便の層を認めました。



翌日・翌々日、腸の蠕動を促す点滴を行い、腸閉塞・腸麻痺を解除し、手術の回避ができた一例です。
排便コントロールに難渋されてる方は、将来、腸捻転や糞石イレウスなど緊急度の高い疾患を併発する可能性があります。年齢を重ねる前に排便コントロールをつかせましょう。
当院では、日本消化管学会の”便通マネージメントドクター”の資格を取得しております。
依存性のある下剤を使用している方もいるようですので、下剤の見直しをしたい方含め、是非当院にご相談ください。