食道裂孔ヘルニアは、逆流性食道炎の原因とされており、食道裂孔の開大や食道 胃接合部の周囲組織の脆弱化などによって発症します。
最近は胃カメラをやっていると、若い方でもこの裂孔ヘルニアを発症している人が多いなという印象があります。もちろん、胸焼けを訴えており、逆流性食道炎を併発しています。統計学的には、高齢女性に多い疾患です。
Upsidedown stomach(UDS)とは胃軸捻転を伴い、高度に胃が縦隔内へ脱出した状態をいいます。縦隔内(心臓の真裏)での圧迫による急性循環不全,呼吸困難、捻転による壊死・穿孔など、命に関わる病態につながることもあります。
言葉で表現するとわかりにくいので、イラストで表現すると以下のような状態となります。

4月に入り、UDSによる軸捻転を内視鏡整復した2例が経験しました(滅多にない病態です)ので、今回ご紹介します。
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<症例1>
80歳代女性、繰り返す嘔吐で受診。




この軸捻転を、内視鏡テクニックで捻転解除しました。

内視鏡処置はその場しのぎであり、いずれまた捻転を繰り返します。そのため、捻転予防が必要とされています。
この患者は、手術可能なため、総合病院外科へ紹介としております。
<症例2>
90歳代女性、食事量減少で受診。


この軸捻転を、内視鏡テクニックで捻転解除しました。

この患者さんは、高齢で慢性心不全や心臓弁膜症を罹患しており、耐術能はないと判断しております。
症例1と比べ、捻転の度合いも弱いため、少量分食指導で対応しております。
どうしてもUDSを繰り返す際は、胃瘻造設し、胃壁と腹壁を固定し、胃が心臓裏に上がらないようにすることも可能です。
UDSを認識していない内視鏡医も多く、年齢の影響と説明される先生もいます。
高齢者またはそのご家族の方で、原因不明の嘔吐でお困りの方がいましたら、是非当院へご相談下さい。
