下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの症状がでた際、一番考える病気といえば、”感染性胃腸炎”です。
この時期、多い病気の一つです。
感染性胃腸炎の原因は、①細菌性 ②ウイルス性に大別されます。
①の細菌性に関しては必要時抗生剤の投与(全例ではない)、②のウイルス性は文字通り抗生剤の投与は不必要であります。
問診で、疼痛部位や季節、食べたものから、原因となる細菌又はウイルスを推測します。
感染性胃腸炎に対して大腸カメラ検査をすることは一般的ではありません。
(急性期に大腸カメラの下剤は良くないため)
症状が長い時や、胃腸炎として非典型的な時(下痢がなく、疼痛だけが続くetc)は、大腸カメラ検査を行います。
今回は上記の条件を満たしたため、内視鏡検査を施行し、診断に至った一例です。
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<症例提示>
30歳代男性。
1週間続く右下腹部痛で受診されました。下痢や血便はなく、若干軟便傾向。
感染性腸炎というよりは、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の鑑別がFirstにあがり、大腸内視鏡検査を行うこととなりました。


右側結腸のびまん性発赤を認め、バウヒン弁に潰瘍性病変を認めました。
この所見は、カンピロバクター腸炎の典型所見です。
生検と便培養で、確定診断となっております。


1ヶ月後の再検査では、きれいな粘膜に戻っています。
カンピロバー腸炎は、Campylobacter jejuniが起因菌です。火を十分に通していない鶏肉を食べると発症します。潜伏期間は、2〜7日とされています。
ギラン・バレー症候群の30〜40%はCampylobacter感染とされています。
足から上行する左右対称性の弛緩性運動麻痺が主症状です。時に命に関わる病態に進行するとされます。
カンピロバクター感染の1〜2週間後に神経症状がでます。
感染性腸炎の中には、多臓器へ影響を与える腸炎があります。当院では、常に起因菌を考え、対応しております。
なお、本症例は、神経症状発症することなく、経過良好でした。